2011.10.03
「蜻蛉」とも書きますね。もともと、「かげろう」は「とんぼ」の古称。昔はどちらも同じ仲間と思われていたようです。飛び方が、地面から立ち上る「陽炎」の揺らめきを思わせることから、この名がつきました。
小さく弱々しい姿の上、成虫の寿命は一時間から数日。古くから、はかないものの象徴とされています。
「あはれともうしとも言はじかげろふのあるかなきかに消けぬる世なれば」よみ人しらず『後撰和歌集』
2011.09.26
古く、「蜻蛉」は「秋津虫」、または「秋津」と呼ばれました。「津」は、「の」という意味の助詞ですから、秋の代表的な虫ということでしょう。
日本のことを、「秋津洲」と呼んだ時期もあります。神武天皇が国を見渡して、「秋津」の雄と雌が交尾をしている形に似ているといわれたからだとか。それはともかく、実りの秋に、蜻蛉が飛びかう風景は、日本人の原風景といえるかもしれませんね。
2011.09.21
葉や茎のやわらかい草のことです。
「和し」は、やわらかいとか、穏やかという意味で、「柔」という字を当てることもあります。「にこにこ」「にっこり」などの擬態語も、「和し」からきているそうですよ。
「葦垣の中の和草にこやかに我と笑まして人に知らゆな」 よみ人知らず『万葉集』
2011.09.12
恋の思いを、特定の植物になぞらえることはありますが、「恋草」は、恋そのものを草にたとえた言葉です。募る恋心は、生い茂っていく草のようだというわけですね。
「恋草を力車に七車積みて恋ふらくわが心から」 広河女王『万葉集』
せつなさよりも、旺盛なパワーを感じる恋です。
2011.09.05
扇の異称です。昔の人は、いろいろなものを草に見立てたのですね。扇は、日本で作り出されたといいます。装飾、儀式、合図、顔を隠すなど、さまざまな用途で使われましたが、語源は「あふぎ(あおぎ)」。あおぐものということですから、まさに「風有草」です。ほかに「手馴草」とも呼びました。いつも手に持って馴じんでいたのでしょう。
2011.08.29
野の草を分けて吹き通る強い風ということです。とくに立春から数えて二百十日目、二百二十日目ごろの台風をさします。「台風」は、英語のtyphoonに漢字を当てたもの。それに比べると、「野分」という言葉は、暴風になぎ倒されていく野の草を思いやる心遣いが感じられて、風情があります。
「野分する野辺のけしきを見みる時は心なき人あらじとぞ思ふ」 藤原季通『千載和歌集』