季節の言葉

2011.05.23

養花天【ようかてん】 文・山下景子

 花を養う天気とは? じつは曇りのことです。つまり「花曇」と同じこと。桜の花が咲くころは、どんよりと曇った日が多いものですね。ですが、そのおかげでなんとか花を散らさずに保つことができるのも事実。
「花曇り朧につづく夕べかな」 与謝蕪村

2011.05.16

夢見草【ゆめみぐさ】 文・山下景子

 桜のことを、「夢見草」ともいいます。夢のようにはかなく散っていくことからこう呼ばれるようになったのだとか。
 ですが、今では多くの人が、夢をふくらませながら桜を眺めます。昔と違う意味で、「夢見草」という名が、ぴったり当てはまるようですね。

2011.05.09

花筏【はないかだ】 文・山下景子

 桜の花びらが水面に散って流れていく様子を、筏に見立てた美しい言葉です。
 ほかに「花筏」という名前の植物もあります。こちらは葉っぱのまん中に、花を咲かせ実をつけるという面白いもの。筏に人が乗っているように見えるところからの命名です。
 とはいえ、やはり、桜の「花筏」のほうが、私たちにはなじみの深いのではないでしょうか。

2011.05.02

桜颪【さくらおろし】 文・山下景子

「散ればこそいとど桜はめでたけれ
うき世になにか久しかるべき」よみ人しらず『伊勢物語』
 桜ほど、散る姿を愛でられてきた花も少ないでしょう。桜の花が散る様子を形容する言葉もたくさんあります。「花吹雪」「桜吹雪」「飛花」「落花」、そして「桜颪」。「颪」は国字で、山から吹き下ろす強い風のことです。どれも、あえて「散る」とはいわないところに、それぞれの思い入れがあるのかもしれません。

2011.04.12

残花【ざんか】 文・山下景子

「夏山の青葉まじりのおそ桜
はつ花よりもめづらしきかな」 藤原盛房

 「遅桜」は遅咲きの桜のこと。「余花」ともいいます。咲き残った桜は「残花」「名残の花」。やがて「桜蘂」を降らせて、「葉桜」となります。それでも桜は桜。昔の人は、盛りを過ぎた桜も、愛情を込めて眺めていたようです。

「盛りをば見る人多し散る花の
あとを訪うこそ情なりけれ」 夢窓疎石

*季刊SORA2011春号掲載

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