2012.02.06
「鮎」の稚魚は、ある程度の大きさになるまでは、透きとおっています。そこで、「氷魚」と呼ばれました。
旧暦十月から、暦の上では、冬。宮中では、「孟冬の旬」という行事が行われ、家臣へ「氷魚」を贈るのが、恒例だったそうです。まさしく、「旬」の魚だということですね。
きらきらと、氷のような輝きを放つ氷魚......。まるで、これからやってくる冬にも、たくさんのきらめきがあることを告げる使者のようです。
2012.01.30
本来は、銀製のお皿や、広く張り詰めた氷のことですが、何よりも、スケートリンクをさす言葉として、おなじみですね。
ウインタースポーツも盛んになり、フィギュアスケートの世界では、「銀盤の女王」という言葉がすっかり定着しました。華麗に舞う彼女たちを、きらきらと輝くステージが、いっそうひき立ててくれるようです。
2011.12.19
「蟋蟀」の異名です。地方によって多少の違いはありますが、蟋蟀の鳴き声を、「裾刺せ、肩刺せ、綴れ刺せ」と聞きなしたことからきています。「綴れ」は「繕いなさいよ」、「刺せ」は「縫いなさいよ」という意味。蟋蟀の声が、冬支度の針仕事をする合図だったのでしょう。
「今よりはつぎて夜よざ寒むになりぬらしつづれさせてふ虫の声する」 良寛
2011.12.12
秋も終りに近づくにつれ、虫たちの数は減り、声も次第に細くなっていきます。すっかり静かになった夜に、ふと虫の音が聞こえてくることがありますね。季節外れのその声を、「忘れ音」といいます。
「きりぎりすわすれ音になくこたつ哉」 松尾芭蕉
時の流れとともに、置き去りにして行ったものが、その声とともによみがえるようです。
2011.12.05
古くは、聞き手を意識して出すのが「こえ」、抑えきれずに出てしまうのが「ね」、感情移入のないのが「おと」というふうに区別していたそうです。虫の場合は、「こえ」や「ね」を使いますね。そういえば、日本人は、虫の鳴き声を左脳でも聞く民族だとか。左脳は、言語中枢のあるところ。きっと、物音や雑音として聞くのではなく、言葉として感じているのでしょう。
「生きもののなげきを虫も鳴きつげる」 木下夕爾
2011.11.28
「蓑虫(みのむし)」は、鬼が捨てて行った子だと思われていたようです。だから、秋になると、「父よ、父よ」と鳴くのだと。そのため、「父乞う虫」とも呼ばれます。
ところが、蓑虫は鳴きません。たぶん、「鐘叩」の「チンチンチンチン」という声と間違ったのだろうということです。でも、この声を聞くと、つい蓑虫の姿を探してしまいます。
「蓑虫のなくや長ながよ夜の明けかねて」 夏目漱石