季節の言葉

2011.08.22

草笛【くさぶえ】 文・山下景子

 草笛といっても、麦笛、葦笛、柴笛、菖蒲笛などさまざま。ですが、どれも素朴で澄みきった音がします。草たちの声そのものなのでしょうか。とすると、時々吹いてみるべきなのかもしれません。もの悲しく聞こえたときは、草たちが泣いているのかも......。
「草笛や目つむれば山河迫りくる」 嶋西うたた

2011.08.15

草枕【くさまくら】 文・山下景子

 今では快適な旅を楽しめるようになりましたが、昔の旅は、草を枕に寝るわびしいものでした。そこから「草枕」は、旅にかかる枕詞になります。また、旅そのものをあらわす言葉としても使われました。
「草枕ただかりそめに迷ひ出でてあはれ幾夜の旅寝しつらん」 よみ人しらず『玉葉和歌集』

2011.08.01

折見草【おりみぐさ】 文・山下景子

 松の異名にもなっていますが、心のことも「折見草」といいました。辞書によると、折によって変わるからだとか。
 ところで、古くから私たちは「折見舞」といって、寒暑が厳しいときや病災害のとき、相手を心配して訪問したり、便りを出したりしてきました。心が変わるからというよりも、支え合うために、相手の心を折々に見つめるから「折見草」。そんなふうに思ったほうが、心ももっと輝くのではないでしょうか。

2011.07.25

草熱れ【くさいきれ】 文・山下景子

 生い茂った草が、夏の日差しに照りつけられて発する、むせかえるような熱気のことです。「熱れる」は、熱くなるとか蒸れるという意味で、語源は「息切れ」、あるいは「息有る」だとか。草たちも、炎天下で一生懸命生きているのですね。
「いづち吹く草のいきれぞ水の上」 松瀬青々

2011.07.15

草津月【くさつづき】 文・山下景子

 旧暦八月の異称のひとつに「草津月」があります。「津」は当て字で、「の」という意味の古い助詞。つまり、「草の月」ということです。次第に暑さもやわらぎ、しのぎやすくなってくる旧暦八月。草花が息を吹き返したようにみずみずしくなるので、「草津月」といったのだそうです。
 ですが、草たちは暑さに負けるどころか、ますます勢いづくようです。現代の八月にも、ぴったりの名前ですね。

2011.07.04

戯【そばえ】 文・山下景子

 空が晴れているのに降る雨は、さまざまな名前で呼ばれます。「天気雨」「日照り雨」「狐の嫁入り」、そして「戯」。戯はもともとふざけることですから、天がふざけて雨を降らせたと思ったのでしょう。
 「通り雨」や「私雨(限られた地域だけに降るにわか雨)」をさして、戯ということもあるようです。きっと、空の上にもいたずらっ子がいるのでしょうね。

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