季節の言葉

2012.08.30

若生え【わかばえ】 文・山下景子

 新しく生え出た芽のことで、蘖(ひこばえ)をさすこともあります。また、比喩的に幼い子どもという意味でも使われました。
 「恋の若生え」といえば、新たに芽生えた恋のこと。どこかうきうきとした気分になる春。きっと、あちこちで恋の若生えが顔をのぞかせていることで

2012.07.24

生え抜き【はえぬき】 文・山下景子

「生え抜く」の「抜く」は、守り抜く、生き抜くなどと同じ、はじめから終わりまでし続けることです。そこに生え続ける......。芽を出した場所への愛着が感じられる言葉です。「生え抜き」という言葉も、本来はその土地に生まれてずっとそこで育つことでしたが、今では最初に所属したところで働き続けるという意味で使われますね。どこか誇らしげな響きが伝わってくるようです。

2012.06.05

実生【みしょう】 文・山下景子

 種子から育てた植物のことを、「実生」といいます。普通、果樹や花木などは、接木や挿木によって増やしていくことが多いようです。種をまいても芽が出ないかもしれない、芽が出ても育たないかもしれない、育っても見事な花や実をつけないかもしれない。その上、時間もかかります。これらの思いは、私たちの人生にも当てはまるのではないでしょうか。だからこそ、実生の植物に格別の思い入れがこもるのでしょうね。

*季刊SORA2012春号掲載

2012.05.21

萌やし【もやし】 文・山下景子

 食材でおなじみの「萌やし」の語源は「萌やす」。芽を出させるという意味です。現在では、豆を発芽させますが、中世までは、米や麦から作ったものを、さらに加工して食用にしていたそうです。麦萌やしは薬用にもしたとか。たしかに、芽には伸びるための力がいっぱい貯えられているのですから、それも納得です。

*季刊SORA2012春号掲載

2012.05.14

蘖【ひこばえ】 文・山下景子

 切株や木の太い根元から生えてきた小さな新芽のことを「蘖」といいます。「ひこ」は曾孫のこと。太い幹に対して、かわいい芽を曾孫にたとえたのですね。そう思って見ると、新芽があどけなく笑っているようにも思えてきます。
「蘖のうちかたまりて吹き靡き」高野素十

*季刊SORA2012春号掲載

2012.05.08

芽吹き【めぶき】 文・山下景子

「芽生」「芽立」「芽張」「芽差」「芽出」「芽ぐみ」、そして、「芽吹き」......。芽が出るという意味の言葉はこんなにたくさんあります。それぞれ、少しずつニュアンスが違いますが、「芽吹き」の場合は、冬の間じっとこらえていた息を、いっせいに吹き出したような印象です。今度は、あたたかい春の空気を思う存分吸い込んで生長していくことでしょう。

*季刊SORA2012春号掲載

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